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Posted by みやchan運営事務局 at

2016年06月04日

シェアリングエコノミーが「市場の失敗」を再び市場化する

地方は人口が減り、マーケットが縮小していくので、パイの取り合いになって競争が激化するといわれることがしばしばあります。確かに人口が減れば地域のマーケット規模が縮小していくのですが、競争が激化する、というのは、すこし違ったりします。なぜなら、地域のマーケットは縮小していくのですが、定年での引退や進学・就職での転出などで、地域マーケットの縮小以上の割合で生産年齢人口が減少していっています。なので結果的に一人の労働者が消費者に提供しなければいけない商品・サービスは増えていくことになります。例えば、昔は1日100個売れていたパン屋さんの場合、地域の人口は減ってマーケットは縮小していますが、競合のパン屋さんが高齢化、跡継ぎ不足等々で閉店していき、今では1日120個売れたりします。

それと同時に、圧倒的な人手不足が発生しています。一人が提供しなければいけない商品・サービスは増えていくのですが、定年で引退したり若者が都市部に流出したりして、働く人が少なく、採用ができません。その結果、仕事はたくさんあるのですが、働く人がおらず事業拡大はおろか、事業の継続すら危ぶまれている企業が多く存在しています。事実、廃業している企業の多くは利益が上がらずに廃業しているのではなく、人手不足、後継者不足によって廃業しています。

ということで、地域が本当に取り組まなければならない問題は「生産性の向上」です。提供できる商品・サービスをいかに効率的に増やしていくかに真剣に取り組まないと、ただでさえ人手不足で採用がままならないなか、事業が拡大することが無いのはもちろん、従業員の定年・引退により事業縮小、最悪の場合廃業に追い込まれていきます。

そこで最近、よく取り上げられるのが「シェアリングエコノミー」です。シェアリングエコノミーとは、わかりやすく言うと、リソース(労働力やお金、機会)の無駄を無くし、最適配分を行うというもの。おもにITインターネットの発達により、生まれてきた概念です。例えば、クラウドソーシングは、人々の空き時間をネットワーク化して、仕事の受給マッチングを行う場所としてつかわれていますし、AirBnBは空いている部屋を宿泊施設として活用できるサービスです。(日本では法整備がまだなので、グレーゾーンですが)

このシェアリングエコノミーは労働力不足の地方にとってうまく活用することで、生産性の向上が期待できます。例えばクロネコヤマトとバス会社の宮崎交通が提携して、「貨客混載」したバスの運行を始めています。宮崎交通にとっては過疎地域でも路線維持を行うことができ、ヤマト運輸にとっては人がわざわざ山奥まで届ける必要がなくなるので(=コスト削減)、お互いにとって利害が一致したモデルです。また先日、宮崎県日南市にオフィスを持つIT企業のポート株式会社と日南市が協力して、遠隔医療の実証に取り組むことが発表されました。これは日南市の無医村地域を対象として、簡単な診療であればタブレットなどを使って病院で対面しなくても診療を受けられる、というものでこれも山間地域での公共交通網の減少とICTの発達により実施にいたりました。住民の住み慣れた場所に住みたい、というニーズに税金をかけずに応えていく素晴らしい取り組みだと思います。

民間サービスが介入できない部分(=市場の失敗)を行政サービスとして補完する、という社会システムを長らく敷いてきましたが、「労働力不足の深刻化」と「ICTの発展」によりこの仕組が大きく変わる可能性があります。例えば、地方のバス・タクシーを運営する交通会社は乗務員が確保できずサービスエリアを拡大できなかったりします。民のサービスで対応出来ない場合、これまでは行政がコミュニティバスを運営したりして対応してきましたが、毎年多くの費用が税金で賄われていました。しかしこれからはUBERのような自動車配車サービスが部分的に解禁される可能性も期待できます。ほかには、急増する外国人観光客の宿泊需要に対応するためにホテルを作りたくても従業員の確保が難しく断念するケースが地方で発生しています。そんな時はAirBnBのような空き部屋、空き家を宿泊客に貸せるサービスが有効になるかもしれません。

このように、これまでは「市場の失敗」部分は行政が税金でサービスを維持してきましたが、シェアリングエコノミーが普及していくことで、再び「市場化」することができるようになります。再び市場化されることで、民間サービスが参入する余地が生まれるので、財政に負担をかけずに地域サービスを継続することができます。「市場の失敗」とされる部分をITと規制緩和で「再市場化」することで地域運営を行っていく手法が、官民連携の事例として増えてくるといいなー、と思ったりしています。
  

Posted by たじぃ at 16:28Comments(0)