2016年10月07日

ヤフーの新卒一括採用廃止は地方にどんな影響をあたえるか。

ヤフーが新卒一括採用を廃止したニュースを見て、この流れの先に地方都市はどうするのかということをぼーっと考えておりまして、まだまだ結論はでていないのですが、途中経過的に書き留めておきたいと思います。


ヤフーのようなネームバリューがあり、待遇も良い企業であれば、新卒に特化した採用を行わないのは非常に合理的だと思います。そもそも有能な人も転職してきてくれるでしょうし、何より強力なメディアとデータが蓄積されているわけで、入社してほしいような人にリーチすることも出来るはずです。活躍するかどうか分からない社会人経験の無い学生を正社員として採用するメリットはほとんど無いわけです。よく「新卒は会社の文化に染まってくれる」というメリットをあげる人もいますが、ヤフーのように常に新しいサービスを時代に合わせて展開して行かなければいけない会社であれば、様々バックグラウンドを持った人が働く多様性を担保したほうが、結果的には会社のためになるでしょう。

この「新卒一括採用廃止」の流れは、採用力のある会社(ネームバリューがあったり待遇がいい会社)から順々に進んでいくと思います。新卒一括採用は採用力のある会社にとっては非合理的な制度だからです。でもそもそも、なぜこの新卒一括採用という世界的にも非常に珍しい制度が維持できていたのでしょうか。それは日本の終身雇用の企業文化とリクルートのビジネスモデルの存在が非常に大きかったわけです。

今回のヤフーの発表で一番打撃を受ける企業はリクルートでしょう。なぜなら彼らは新卒一括採用の文化(というか制度)を守り続けることで、自社のビジネスモデルが成立していたからです。リクナビにはほぼ100%の就職活動している大学生が会員登録しており、その人たちに対してリーチをすることで求人企業からお金をもらうというビジネスモデルです。これはリクルート(と新卒生)が持っている既得権益であって、もし新卒一括採用が無くなれば、大学3年生でインターンに行って、4年生になったらエントリーシートを書いて、SPIを受けて、というリクルートが頑張って普及させてきた就職活動の流れが変わり、新卒リクナビのビジネスモデルが崩壊しかねないわけです。(もちろんリクルートは中途採用の領域にも入っているので、あくまでもいわゆる新卒向けのリクナビが打撃を受け、そのかわり中途採用の方が伸びる可能性があるわけですが)

ちなみに、リクルートはこの新卒一括採用のモデルを社会に根付かせた上で、自社が勝てるビジネスモデルを展開してきました。 入社半年の1年目と入社10年目のベテランのパフォーマンスが変わらない(ときには新卒の方が高い)ように教育制度&ビジネスモデルを中心に事業化してきました。(ホットペッパーとかホットペッパービューティーとかは好例)なので、学習能力の高い偏差値の高い学生を採用し教育し短期間でパフォーマンスを上げさせる。人件費が高くなる40歳までには転職や起業してリクルートをやめてもらうことで販管費の上昇を防ぎ、高い利益率を維持する事業モデルを確立してきました。本当によく考えられた素晴らしい経営戦略だなーとつくづく思います。


さて今後、ヤフーのように新卒一括採用を廃止する企業が増えてくると何が起こるのか。
まずは失業率の上昇です。日本は諸外国に比べて非常に低い失業率を維持してきました。これは新卒一括採用の制度が果たした役割は非常に大きいわけで、事実諸外国では若年層の失業率が非常に高いわけです。終身雇用制度が無い国であれば例えポテンシャルがあっても、なんのスキルもない若者を雇用し、教育コストを自社で負担する合理的な理由はありません。それよりもすぐにでも会社に貢献してくれるスキル・経験を持った人を採用したいわけです。僕も昔バックパッカーでアジアをフラフラしていたとき、アメリカ・ヨーロッパの大学を卒業したあと就職せずに旅をしている若者にたくさん出会いました。彼らは口をそろえて「今はいろんなものを見て体験して経験を積むときなんだ」と言ってました。要は、大学卒業してすぐにはスキルも経験も足りず就職できないのです。

日本の新卒採用は同じ大学生がライバルでした。しかし同じ大学生であるためそこまで差がつく事はありませんでした。ボクシングで言うと同じ階級の相手と試合ができていたわけです。しかし、これからは「大学時代はテニスサークルの代表と、バイト先の居酒屋ではバイトリーダーをやってました!」という22歳の新卒と「前職では◯◯銀行や◯◯省のシステムの構築をやってました。JAVA、PHP、C言語は扱えます!」という28歳のバリバリのエンジニアが同じ土俵で戦うわけで、もうこれは圧倒的に新卒が不利なわけです。ボクシング歴3ヶ月の50kgとボクシング歴10年の無差別級が本気で試合をするわけです。もう完全に勝ち目はありません。


日本は新卒の教育コストを主に企業が負担していました。しかし、今後そのコストを企業が負担しないとなると誰が負担をするのか。一番の候補としては大学です。しかしいまだに多くの大学が「大学はアカデミックな場で、勉強や研究するところだ」とか言いながら、就職のための技能習得は後回しにしています。となると、結局はその教育コストを払うのは学生自身(もしくは親)になります。


大学の間にいかにして企業の採用水準まで成長できるかが非常に大事なポイントになります。となるとできるだけ早いうちから就業経験を積み、スキルを上げていく必要で、それは大学の座学だけでは得られません。それは「時間をお金と交換するアルバイト」ではなく、もっと踏み込んで「時間をスキル・知見と交換する濃い職業体験」であることが求められ、それはまさにインターンシップに行き着きます。(もちろんアルバイトでも視点と好奇心の持ちようではスキル・知見が身につきます)


そして、今回のヤフーの発表でほとんどの人が気にしていないが不思議なのですが、18歳~29歳を対象にしたポテンシャル採用を新設しています。これってつまり「大学在学中でもいい人がいれば採用します!」というわけです。少なくとも大学を卒業することが仕事で高いパフォーマンスを発揮することにおいて重要な要素では無い、というヤフーからの意思表示であって、今後は大学在学中ですがヤフーに内定がでたので退学します。という学生が出て来る可能性が高い。無名大学を卒業することより、大学を中退してでもファーストキャリアがヤフーの方が今後のキャリアの幅が広がりそうですよね。しかも高い学費を払う必要も無い。となると、もし本当にヤフーのような採用形態が広がっていくと、高校卒業からすでに就職活動(もっと大きなキャリア設計の活動)が始まるわけです。

さて、それを前提に考えたときに、地方はどういうポジショニングがあるのか。
学生は大学時代に職業経験を積まなくては行けないので、地方はその舞台を用意する。これまでも新卒採用をしいという地場企業はごまんとありました。しかし学生にとってリクナビに載ってない企業は採用してないと(意図的に)思い込まされており、その結果、高いリクナビに掲載しなければなりませんでした。しかしリクルートが作った採用活動のルール上では採用予算を桁違いに持っている東京の企業が圧倒的に有利で、結果として新卒採用はできず、ハローワーク経由か縁故による採用しかできませんでした。

しかし、これから採用活動のルールは大きく変わってきています。大学生のうちからちゃんと職業体験を経てスキルなり、経験なりを持ち合わせていないと、卒業してから就職が出来ない。そうなると、より就職に直結する高い経験値を求めます。大学を卒業して採用予算のある会社に人材を取られ続けていった地方都市は慢性的な人手不足です。しかし、これからは大学生も積極的にインターンシップに参加する。そうなると宮崎のような地方都市の企業も早くから大学生の接点が持てるわけで、これは人材の地元定着に追い風になります。少なくとも大学時代はパチンコ屋でバイト&サークルして、リクナビで就職活動して東京の企業に内定して宮崎を離れていた大学生が少しは減る可能性がある。今後は大学生が地場の企業でインターンをすることで、学生は就職活動のための経験値アップ。企業は人材確保の手段獲得として両者の利害が一致するため、インターンシップが普及していくことになると思います。

大学も望むも望まざるもその波に飲まれていくことになるでしょう。人生の中で深く研究することは大事だ!というアカデミックな思想も大切だとは思いますが、世の中の力学は常に変わっていきます。変われないものは、とって替えられる。今回のヤフーの新卒一括採用廃止の発表は、リクルートの新卒向けリクナビだけでなく、大学の役割に大きな変化がもたらされるんだと思います。

その意味で、宮崎大学の地域資源創生学部の役割は非常に大きいし、インターンシップの専門のスタッフや、キャリア支援の専門のスタッフが着任したことは素晴らしく追い風です。「変わらないものは、とって替えられる。」これからの変化にワクワクしています!

追伸
こんなコトを言ってますが、全く何も出来ない新卒だった僕の教育コストを負担してくれたリクルートにはとっても感謝しています。




この記事へのコメント
非常に興味深いしためになるエントリーでした!
必然的に自己プロデュースと自分は何が出来るって発信するプレゼン力が必要になりますね。

今後の学生たちに幸あれ!
Posted by まつおち at 2016年10月09日 00:53
 
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ヤフーの新卒一括採用廃止は地方にどんな影響をあたえるか。
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