2017年04月10日

「問題」と「課題」を混同してしまう残念な地方創生

東京一極集中をどう是正するか、移住者をどう増やすかなど、地方創生にまつわる議論や取り組みが盛り上がっています。政府は従来のような「日本全国一律支援します」というスタンスから、「頑張る市町村を集中的にサポートします」というスタンスに変わるなど、政府としても大きく方針転換しつつあります。しかしながら、現場の地域や、市町村に行ってみると地域の問題が解決されるどころが、どんどん問題が悪化する泥沼にはまっている地域も見られます。なぜ、そのようなことが起こるのか。まちづくりで大切と言われる「公民連携」を軸にまとめてみました。





問題を解決するためには大きく3つのサイクルがあります。①解決すべき問題の決定、②問題解決のための適切な課題の設定、③設定された課題を正確に実行する、です。問題と課題はよく混同して使われることがありますが、問題とは「理想の姿と現実の姿のギャップ」のことをいい、課題は「そのギャップを埋めるために取り組むタスク」のことをいいます。小中学校の夏休みの宿題の定番である読書感想文にも課題図書というのがあったと思います。この宿題は「読書を通して自分の考えを作文としてアウトプットすることができる」という理想と、「その力がまだ足りない」という現実を埋めるために子供にとって適切な「課題」を学校側が設定しているわけです。計算ドリルや漢字ドリルも、「習った漢字は読み書きできる、習った計算は正確にできる」という理想と「まだ計算力、漢字力が十分ではない」という現実を埋めるためのものですね。


さて、このような問題と課題の定義についてはビジネスの場では当たり前のように区別されていますが、こと地域活性化や地方創生の分野になると急に曖昧になってしまいます。地域で行われる会議では問題も課題も区別して語られることは皆無ですし、もし地域が解決すべき問題を決めれたとしても課題設定がチグハグ、さらに誰もその課題に取り組まない、、、などなど絶望的な気持ちになることが多々ありました。


地域の問題を解決するための3つのサイクル①解決すべき問題の決定、②問題解決のための適切な課題の設定、③設定された課題を正確に実行するを官(行政)・民(企業)・政(政治家)で役割分担することが重要です。公民連携とざっくり言われることがありますが、具体的な肝は問題解決サイクルを公(政・官)と民とで役割分担することです。

①の解決すべき問題の決定をするのは政治家(主に首長)です。極論を言えば政治家はそのために住民から投票というカタチで選ばれているわけです。どの問題を解決するのか、それをやってくれるリーダーを選ぶのが首長選挙です。
次に②問題解決のための適切な課題の設定は民間が得意とする領域です。理想と現実を的確に把握し、その差を埋めるための課題をロジカルに設定する力は民間企業の商品・サービス改善で培われています。
そして最後の③設定された課題を正確に実行するに関しては官(行政)が最も得意とする領域でしょう。僕も4年前から行政で仕事をすることになって、タスクを正確に確実に処理する力に尊敬しました。そもそも行政は一定の試験に合格している人たちの集団です。誰かから与えられた課題(タスク)を正確に時間内に処理する力の高い人たちの集まりなので、それもそのはずですね。その一方で自らで課題を設定する機会は多くありません。県や国の補助金を使って建物を作ることはあっても、そもそもその建物を作ることで問題が解決に向かうのか、を問われることはほぼありませんでした。自治体の施策といえば、同じようなイベントやったり、ゆるキャラ作ったり、動画を作ったり、、、。果たしてそれが地域の問題解決につながるのか疑問なのに実施しているのは適切な課題の設定が苦手(な意思決定組織)だからでしょう。


僕が住む宮崎県日南市は地方創生の文脈で紹介していただくことがしばしばあります。例えば、油津商店街の再生について。この油津商店街は今では全国どこにでもあるようなシャッター商店街で、「子供だけで近づかないように」と指導されるほどの商店街でした。そのシャッター商店街を再生させるべく日南市が打ち出したのは「4年で20店舗のテナントを誘致する専門家を公募する」というもの。委託料は市長よりも高い月額90万円と全国でも大きく話題になりました。そこには333人の応募がありましたが、そこから選ばれたのが木藤亮太さん。彼は契約期間の約4年で28店舗のテナント、企業、保育施設、ゲストハウスなどを油津商店街に誘致し、活気を取り戻しつつあります。また、企業誘致の面でも取り上げられることがありIT関連企業が1年で10社進出し、すでに70名以上の雇用を創出。しかもそのほとんどが20,30代の女性ということも注目をあつめています。他にも1回で4,000人を超える外国人観光客が訪れる大型クルーズ船がシーズン中は毎週のように入港したり、城下町の空き家を民間資金でリノベーションし高級宿泊施設に変容したりと、様々な施策が同時並行で進んでいます。


それらの「衰退した商店街」「若者の少ない雇用」「観光」「増える空き家」を解決すべき問題として設定したのは市長です(前市長も含む)。そしてその問題解決のための課題の設定は民間が中心となって行い、設定された課題には行政が責任を持って関わりながら市民も一緒に取り組む。そうやって一つ一つプロジェクトが動き出し、問題解決3つのサイクルが加速し、それがPDCAのもと改善して精度が高くなっていく。それが事業となり、マーケット(市場)の力に乗っかり、行政や政治が介入せずとも自走していく。そんな事例が日南市では生まれだしています。



戦後からバブル時代くらいまでは、問題解決の3つのサイクルは日南のそれとは違っていました。①の解決すべき問題の決定は昔も政治家でしたが、②の課題の設定は官(地方公務員)が行い、③の課題への取り組みは民(企業)がやっていました。地方公務員は国の各省庁からスキームと補助金がセットになったメニューが出されているので、自分たちが取り組みたい課題を決めて導入すればよかった。これまでは国が用意するメニューを選んで、民間の事業者に発注しておけば地域は回っていました。それは各省庁が日本よりも先を行く国を視察し、その事例を各市町村(都道府県)が導入しやすいメニューにしてくれていたからです。なので、地方は国が作るメニューを選んでおけばなんとなく時流に沿ったまちづくりができていたわけです。(もちろん、人口が増加していたので筋の悪い課題を設定していても自然と問題が解決されていくこともあったと思います)



しかし、日本は世界でもまれに見るスピードで高齢化が進み、人口の急激な減少が見込まれ、もはや日本が参考にできる(成功している)国がなくなってしまいました。国としてもこれまでのように成功国の事例を補助メニューにカスタマイズして、全国の市町村に導入してもらうだけではダメということに気がついてしまいました。しかし全国の市町村のマインドは昔と同じで国が用意するメニューをいかに導入するかから抜け出せず、国としても全国の市町村に共通する成功モデルをメニューとして作ることはできないと悟っています。だからこそ、これまでの地方活性化施策に見られた「全国一律での活性化」から「頑張る地域を優先してサポートする」という方針に切り替えたのでしょう。そんな中、まさに主役は地方です。地方は現場で必死に問題解決に注力し、国はその中から汎用性の高いものを他の「やる気のある」地域に広めていく。これまでとは全く逆のベクトルでの地方の活性化の取り組みが始まりました。



そして問題解決3つのサイクルである①解決すべき問題の決定、②適切な課題設定、③課題への取り組み、がうまく進んでいれば応援&サポートし、変な方向に進んでいれば方向修正をサポートするのが「議会」の役割です。執行部側(=問題解決側)の伴走者として地域住民の声を届けることが役割です。



そんななか、なんと4月16日(日)は日南市長選挙、市議会補欠選挙が行われます!地域のあらゆる問題の中でどの問題を解決すべきなのかを決める首長と、その問題解決サイクルが順調に進んでいるかどうかをチェックする議会のメンバーを決める大事な日です。ぜひみなさん、投票にいきましょう!それが地域の問題解決を支える地域住民の意思表示の場です。



 
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