2018年06月10日
キャリアアップを目指す人ほど地方に移住すべき理由
地方移住を検討するメインは若者へ
地方への移住を推進するNPO法人ふるさと回帰支援センターが発表したデータによると、39歳以下の移住相談の割合が10年間で18%から50%にまで増加した。相談内容も一昔前はリタイア後に地方で悠々自適な生活を希望する相談が多かったが、近年は移住先での就業環境についての相談が増加している。国の政策としても東京一極集中の緩和を目的として地域おこし協力隊の募集枠も拡大することが発表され、さらに地方で起業する場合の金銭的な支援策も新設される。
その一方で「若いうちは競争激しい東京で鍛えるべきだ!」という声や「地方に移住したらキャリアに傷が付く」という考えも存在する。確かにマーケットが大きく競合も多い東京で働くことで得られることは多い。しかしながら、キャリアアップを考えればなおさら、地方に移住したほうが有利なケースが多い。
甲子園出場もキャリアアップも地方のほうが有利
夏の風物詩でもある全国高校野球選手権大会、通称「夏の甲子園」は全試合が全国生中放送され、最近は週末の試合であれば満席になることも珍しくない。プロ野球や大学、社会人野球のスカウトがネット裏に控え、ストップウォッチとスコアブックを片手に有望な選手を探している。甲子園は高校球児が最も憧れる聖地で、自身の次のキャリアが決まる大事な舞台なのだ。この甲子園に出場できるのは都道府県の予選を勝ち抜いた1校のみだ(東京と北海道は2校)。しかし、都道府県によって人口にばらつきがあり、もちろん出場校の数も違う。最も激戦なのが毎年約200の高校が出場する神奈川県で、逆に最も勝ち上がりやすいのは29校の福井県だ。神奈川県大会だと5回勝ってようやくベスト8にも関わらず、福井県大会であればシードに残れば4回勝てば甲子園に出場できるのだ。この差を利用して行われるのがいわゆる越境留学で、激戦区に住む野球が上手な選手が福井県や高知県などの高校の数が少ない県に引っ越して主に私立高校から甲子園を目指すのだ。選手としてはキャリアパスに直結する甲子園出場の可能性が上がり、高校としても知名度が上がることで入学者が増えるなど、お互いにとってメリットが生じる。
しかし、これがビジネスやキャリアの分野になると全く逆のことが起こっている。いわゆる夢や目標を持っていたり、物事に対して積極的な人、(定義と測り方は別として)能力の高い人ほど激戦区の東京を目指す傾向がある。たしかに昔は東京から情報が発信され、モノとチャンスも東京に集まっていたので仕方ない面もあったが、現代になってもなお東京を目指し続けている。 キャリアアップの世界も甲子園と同じで、各都道府県に「枠」が用意されている。全国から集まる激戦区の東京を勝ち抜いても、人が少ない地方から勝ち抜いても、全国大会の甲子園で対等な立場で出場できるのだ。
大学中退からいきなりテレビ出演した移住者
例えば、私の住む日南市には中央大学を中退してイチゴ農家に転身した渡邉たいぴー(愛称)という若者がいる。彼はイチゴを作りながら、地元のお祭りでバルーンアートを行ったり、塾を開いたりしている。東京だと「大学中退した変な若者」というある種レッテルを貼られていたかもしれないが、日南市では人手不足に悩むなか新規就農してくれ、地元のお祭りを盛り上げてくれ、子どもたちに勉強を教えてくれる救世主となる。実際、彼は地元のテレビや新聞でひんぱんに登場している。日南市で行われた国家公務員の研修で講師を務めたり、地元の国立大学で300人に向けて起業家論の講話をしたり、宮崎県内ではそこそこ有名人だ。彼は地方に越境留学して甲子園に出場し、多くのスカウトにアピールし、キャリアを切り開いている好事例だ。確かに彼のセンスとバイタリティとキャラクターは素晴らしい。しかし、もし大学を中退したあと東京に居続けたならば、スカウトの目に留まるまではまだ時間を要しただろう。東京大会ではベスト8に入れるかどうか、というところだろうか。(笑) しかし、彼は強豪校、同じポジションを争うライバルがひしめく東京の高校を飛び出し、宮崎から甲子園を目指した。その結果、メディアの注目を集め、スカウトへのアピールが見事に成功した。彼はビジネスを拡大し、現在はきくらげの栽培も行っており、それも問い合わせがひっきりなしに続いている。
地方移住は今やキャリアアップの手段へ
地方移住というと従来は出世やキャリアアップを諦めて、仕事は最低限で趣味やゆっくりとした生活をしたい人というイメージが強かった。しかし、時代は代わり、SNSを通じて誰でもどこからでも情報を発信することができ、WEB会議やチャットツールが浸透することで、地域に関係なく仕事ができ、東京でしかつかめなかったチャンスが全国どこからでも狙えるのだ。
しかも、若者が流出し続けているため、一人が担わなくてはならない役割がたくさんある。つまりライバルの高校の数が少ない上に、野球部の部員も少ないため、すぐに打席が回ってくるし、複数のポジションを守らなければならない。そのためバッターボックスに立つ機会も多く、打球が飛んでくる機会も多いので、成長機会が用意されている。さらに近年は政府が政策として地方創生を掲げているため21世紀枠のようなものまで用意され、スカウトの目に留まる機会がかなり多い。
地元選手の出場機会も奪わない
高校野球で越境留学してくる選手が増えると地元出身の選手が甲子園に出られなくなる、という否定的な意見がある。しかし、移住に関しては各地域で1校しか甲子園に出られないわけではない。誰かが甲子園に出場すれば、その周りにいる人達にも注目されるチャンスが訪れる。甲子園と違ってベンチ入りできる選手の人数に制限がないため、越境留学した移住選手が地元選手の機会を奪うことなく、むしろ移住者が活躍することで地元出身の選手が注目される可能性が生まれるのだ。
つまり、地域はただ移住者を受け入れるだけでなく、環境を整え、サポートし、移住者を活躍させることが大切になる。そうすることで地元選手も一緒に甲子園に出場することができ、地元の光る原石だった選手もスカウトの目に留まる。さらに地域のPRに繋がり、さらに翌年以降により上手な選手が越境留学してくるのだ。
移住施策は移住した人数ではなく、地域を甲子園に導いたかへ
これだけWin-Winの関係が見えているのに、移住者を受け入れ彼らを活躍させる方向に向かないのはなぜか。それは、よその地域の選手ではなくて地元の選手で甲子園を目指すべきだ、と意固地な考えから脱しきれてないからではないだろうか。高校野球にはベンチ入りできる人数が決まっているので気持ちは分かるが、地域のPRは人数に制限はない。それならば、うまく移住者の力を引き出し、一緒に甲子園に出場したほうが合理的でなにより楽だ。キャリア志向の実力ある移住者もできるだけ打席が回ってき、守備機会が多く、自身が活躍できる地域を選ぶだろう。移住施策は単純に頭数をカウントするのではなく、移住者と地域がメリットを享受しあえる関係づくりが目指すべき姿だろう。
地方への移住を推進するNPO法人ふるさと回帰支援センターが発表したデータによると、39歳以下の移住相談の割合が10年間で18%から50%にまで増加した。相談内容も一昔前はリタイア後に地方で悠々自適な生活を希望する相談が多かったが、近年は移住先での就業環境についての相談が増加している。国の政策としても東京一極集中の緩和を目的として地域おこし協力隊の募集枠も拡大することが発表され、さらに地方で起業する場合の金銭的な支援策も新設される。
その一方で「若いうちは競争激しい東京で鍛えるべきだ!」という声や「地方に移住したらキャリアに傷が付く」という考えも存在する。確かにマーケットが大きく競合も多い東京で働くことで得られることは多い。しかしながら、キャリアアップを考えればなおさら、地方に移住したほうが有利なケースが多い。
甲子園出場もキャリアアップも地方のほうが有利
夏の風物詩でもある全国高校野球選手権大会、通称「夏の甲子園」は全試合が全国生中放送され、最近は週末の試合であれば満席になることも珍しくない。プロ野球や大学、社会人野球のスカウトがネット裏に控え、ストップウォッチとスコアブックを片手に有望な選手を探している。甲子園は高校球児が最も憧れる聖地で、自身の次のキャリアが決まる大事な舞台なのだ。この甲子園に出場できるのは都道府県の予選を勝ち抜いた1校のみだ(東京と北海道は2校)。しかし、都道府県によって人口にばらつきがあり、もちろん出場校の数も違う。最も激戦なのが毎年約200の高校が出場する神奈川県で、逆に最も勝ち上がりやすいのは29校の福井県だ。神奈川県大会だと5回勝ってようやくベスト8にも関わらず、福井県大会であればシードに残れば4回勝てば甲子園に出場できるのだ。この差を利用して行われるのがいわゆる越境留学で、激戦区に住む野球が上手な選手が福井県や高知県などの高校の数が少ない県に引っ越して主に私立高校から甲子園を目指すのだ。選手としてはキャリアパスに直結する甲子園出場の可能性が上がり、高校としても知名度が上がることで入学者が増えるなど、お互いにとってメリットが生じる。
しかし、これがビジネスやキャリアの分野になると全く逆のことが起こっている。いわゆる夢や目標を持っていたり、物事に対して積極的な人、(定義と測り方は別として)能力の高い人ほど激戦区の東京を目指す傾向がある。たしかに昔は東京から情報が発信され、モノとチャンスも東京に集まっていたので仕方ない面もあったが、現代になってもなお東京を目指し続けている。 キャリアアップの世界も甲子園と同じで、各都道府県に「枠」が用意されている。全国から集まる激戦区の東京を勝ち抜いても、人が少ない地方から勝ち抜いても、全国大会の甲子園で対等な立場で出場できるのだ。
大学中退からいきなりテレビ出演した移住者
例えば、私の住む日南市には中央大学を中退してイチゴ農家に転身した渡邉たいぴー(愛称)という若者がいる。彼はイチゴを作りながら、地元のお祭りでバルーンアートを行ったり、塾を開いたりしている。東京だと「大学中退した変な若者」というある種レッテルを貼られていたかもしれないが、日南市では人手不足に悩むなか新規就農してくれ、地元のお祭りを盛り上げてくれ、子どもたちに勉強を教えてくれる救世主となる。実際、彼は地元のテレビや新聞でひんぱんに登場している。日南市で行われた国家公務員の研修で講師を務めたり、地元の国立大学で300人に向けて起業家論の講話をしたり、宮崎県内ではそこそこ有名人だ。彼は地方に越境留学して甲子園に出場し、多くのスカウトにアピールし、キャリアを切り開いている好事例だ。確かに彼のセンスとバイタリティとキャラクターは素晴らしい。しかし、もし大学を中退したあと東京に居続けたならば、スカウトの目に留まるまではまだ時間を要しただろう。東京大会ではベスト8に入れるかどうか、というところだろうか。(笑) しかし、彼は強豪校、同じポジションを争うライバルがひしめく東京の高校を飛び出し、宮崎から甲子園を目指した。その結果、メディアの注目を集め、スカウトへのアピールが見事に成功した。彼はビジネスを拡大し、現在はきくらげの栽培も行っており、それも問い合わせがひっきりなしに続いている。
地方移住は今やキャリアアップの手段へ
地方移住というと従来は出世やキャリアアップを諦めて、仕事は最低限で趣味やゆっくりとした生活をしたい人というイメージが強かった。しかし、時代は代わり、SNSを通じて誰でもどこからでも情報を発信することができ、WEB会議やチャットツールが浸透することで、地域に関係なく仕事ができ、東京でしかつかめなかったチャンスが全国どこからでも狙えるのだ。
しかも、若者が流出し続けているため、一人が担わなくてはならない役割がたくさんある。つまりライバルの高校の数が少ない上に、野球部の部員も少ないため、すぐに打席が回ってくるし、複数のポジションを守らなければならない。そのためバッターボックスに立つ機会も多く、打球が飛んでくる機会も多いので、成長機会が用意されている。さらに近年は政府が政策として地方創生を掲げているため21世紀枠のようなものまで用意され、スカウトの目に留まる機会がかなり多い。
地元選手の出場機会も奪わない
高校野球で越境留学してくる選手が増えると地元出身の選手が甲子園に出られなくなる、という否定的な意見がある。しかし、移住に関しては各地域で1校しか甲子園に出られないわけではない。誰かが甲子園に出場すれば、その周りにいる人達にも注目されるチャンスが訪れる。甲子園と違ってベンチ入りできる選手の人数に制限がないため、越境留学した移住選手が地元選手の機会を奪うことなく、むしろ移住者が活躍することで地元出身の選手が注目される可能性が生まれるのだ。
つまり、地域はただ移住者を受け入れるだけでなく、環境を整え、サポートし、移住者を活躍させることが大切になる。そうすることで地元選手も一緒に甲子園に出場することができ、地元の光る原石だった選手もスカウトの目に留まる。さらに地域のPRに繋がり、さらに翌年以降により上手な選手が越境留学してくるのだ。
移住施策は移住した人数ではなく、地域を甲子園に導いたかへ
これだけWin-Winの関係が見えているのに、移住者を受け入れ彼らを活躍させる方向に向かないのはなぜか。それは、よその地域の選手ではなくて地元の選手で甲子園を目指すべきだ、と意固地な考えから脱しきれてないからではないだろうか。高校野球にはベンチ入りできる人数が決まっているので気持ちは分かるが、地域のPRは人数に制限はない。それならば、うまく移住者の力を引き出し、一緒に甲子園に出場したほうが合理的でなにより楽だ。キャリア志向の実力ある移住者もできるだけ打席が回ってき、守備機会が多く、自身が活躍できる地域を選ぶだろう。移住施策は単純に頭数をカウントするのではなく、移住者と地域がメリットを享受しあえる関係づくりが目指すべき姿だろう。
Posted by たじぃ at
23:16
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