2012年06月24日

日本の技術流出と民主主義

このまえ、三一重工という中国の工作機器メーカーで働くある日本人に会った。三一重工とは中国最大の工作機器メーカーで、昨年コマツを抜いて中国ナンバー1にたった大きな会社。彼はコマツを定年退職されたあと、日本で定年生活を送っている時に、あるツテから声がかかり、三一重工に入社。彼は中国語はまったく話せないんだけれども、今は三一重工の若手社員の教育に取り組んでいらっしゃるとのこと。

彼と話していると、「自分の仕事が働いていたコマツを苦しめることになり、自分のやっていることに疑問を感じることもある。でも、日本にいては自分はただのおじいちゃん。中国だとこれまで自分が経験してきた知見をこれからの若い人に伝え、教え、育てていくことに、自分の存在価値を感じることができる。」とおっしゃっていた。

日本では「日本の技術が中国に流出して、将来大変なことになる」みたいなことがよく言われているんだけど、その流出の背景にはこういった事情がある。彼曰く、コマツ出身者以外も含めると15名程が、三一重工で若手育成を行なっているとのこと。反対意見も賛成意見も両方あると思う。中には売国奴と罵りたくなる人もいるだろうと思う。

でも、ぼくはとても肯定的な意見だ。個人は組織を上回るべきと思っており、中長期的なスパンで見た時に個人の意思を組織が抑圧している状態は、極論を言えば洗脳だと思う。民主主義を掲げている国である以上、社会的な圧力で個人の欲求を抑圧することはあってはいけない。今回の例だと、定年退職された一人のおじちゃんが「社会的承認」を求めているにもかかわらず、それを近視眼的な「国益」という観点から抑圧しかねない状況なわけ。もちろんなんでもかんでも流出するのも問題なので、機密事項を漏らしたとか、法的拘束力をもつ事象はちゃんと法制で対応すればいい。あくまで僕が言いたいのは、中長期的なスパンで組織(社会)の暗黙の圧力によって、個人の欲求を阻害することはあってはいけないということ。僕はこのおじさんが下した判断(語弊を恐れず言うと、コマツで得た知見を三一で共有すること)を心から応援したいし、それに文句を言うような奴は、「器の小さな奴」の一蹴りにしたい。

個人の欲求を追求する権利を国民全員が平等に持っている国こそが、真の民主主義だと思う。「国益が損なわれる」と文句を言う奴は、実はあなたこそ共産主義なのかと。ぐさっと言ってやりたい。そんな事を思いながら上海の夜を過ごす。





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Posted by たじぃ at 14:55│Comments(1)
この記事へのコメント
やはり日本には多くの試練を与えて乗り越えて行って欲しいものです
Posted by 馬 at 2012年06月24日 22:07
 
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    コメント(1)